PC用のストレージと言えば以前は「HDD(ハードディスクドライブ)」が主流でしたが、最近のノートPCであればHDDよりも小さくて速くて低消費電力で耐衝に強い「SSD(ソリッドステートドライブ)」への置き換えが各PCメーカー共にほぼ完了しつつあり(DELLやHPのお安いノートPCではまだHDDを使っているモデルも残ってはいますが)、AppleのMacBookシリーズで言えば2013年以降のモデルにはHDDは採用されておらずとっくの昔にSSDに切り替わっています。
↑外付けストレージについても最近はSSDが主流になりつつはありますが、でもそれは容量が「2TB」程度までに限ったお話で、容量が4TBを超えるようなSSDは価格がまだまだ高く非現実的な値段なので、4TBを超える大容量ストレージが欲しい場合には今はまだ「SSD」よりも容量あたりの単価が圧倒的に安い「HDD」を選択した方がきっと満足できる思います(お金が無限にあるのならもちろん「SSD」を買った方が速くて満足できますが・・・)。
せきねさんも基本的にデータは「SSD」に保存をしているのですが、そのデータの「バックアップ用」としてはSSDではなくHDDを使用しています。せきねさんが2020年12月に購入したのが・・・
↑何かと評判のWD(ウエスタンデジタル)社の外付けHDD「WD Elements Desktop 8TB(WDBBKG0080HBK-JESN)」です(2021年9月現在も販売してます)。
↑WD Elements Desktopは4TB〜18TBまで幅広いラインナップを持つ人気の「外付けHDD」です。
せきねさん個人的には「HDD本体(中身)」だけあれば良かったのですが、WDの場合「外付けHDD」として販売されているこちらの製品の方がやたらと低価格で販売されており、セール時にはさらに安くなったりするので「HDD本体(中身)」を買うよりもこちらを買って中身を取り出した方がお得にHDDが手に入り安上がりだったりします。その為、このシリーズを分解して中身を取り出しPCやTVのHDDレコーダーに取り付けている方が結構いたりします。
5400回転なのに異様に高速なHDD(何だか怪しい・・・)
現在販売されているHDDは主に「毎分5400回転(5400rpm)」で動作するモデルとより高速な「毎分7200回転(7200rpm)」で動作するモデルの2種類があります。5400回転であれば消費電力が少なく発熱も小さい利点がありますが読み書き速度は少し遅いと言う欠点があり、7200回転であれば消費電力が高く発熱も大きいと言う欠点がありますが読み書きは高速と言う利点があります。今回購入したWD Elements Desktopに搭載されているHDDの回転数はどうなんだろう?と疑問に思ったのですが、製品パッケージにもWDのサイトにも不思議とどこにも回転数の記載がなく、気になって購入前にネットで調べてみたところPC上では「5400回転」と表示されるらしいです。
CrystalDiskInfoでHDDの「回転数」情報を確認
↑せきねさんも購入したHDDを実際にPCに接続してディスクの情報を取得できるとても有名なソフト「CrystalDiskInfo」を使って確認をしてみたところ、中には「WD80EDAZ-11TA3A0(CMR)」と言うHDDが搭載されており回転数は「5400RPM」と表示されました。(ちなみに画像でCドライブの温度が太陽の表面温度の約2倍の11759度になっていますが、これはMac上でWindowsを動作させると値が変になるだけなので心配しないでください(笑))
ベンチマークソフトで速度を計測
ついでに「最近のHDDってどの程度のスピードが出るのだろう?」と思いMacで実行できるベンチマークソフト(AmorphousDiskMark.app)を走らせたところ・・・
↑「読込速度:最大219MB/s」、「書込速度:最大221MB/s」と言うすごい速度が出ました。最初は「えっ!最近の5400回転のHDDってこんなに速いの!」と驚いたのですが、冷静に考えてみると・・・
5400回転で「220MB/s」も速度が出ると言う事は、これが7200回転だった場合には単純計算で1.33倍の速度が出るはずなるので計算すると「293MB/s」も出る事になってしまいます。「いや、それはHDDの速度的におかしいぞ?(しかも5400回転の割にHDDの動作音もデカイし・・・)」と思いネットでさらに調べてみました。
WD製品の「5400回転クラス」は実は「7200回転」らしい
調べてみると、どうやら海外でも同じようにWD製品のHDDの回転速度とスピードに疑問を持った方々がいたようで、その方々が確認した結果・・・
↑WD製品の一部で「5400 RPMクラス」という微妙なスペック表記がされている製品があり、それらの製品は「5400回転」ではなく実際は「7200回転」で動作をしている事が分かったそうです。そもそも回転数を示す際に「クラス」と言う単位を使っている時点で意味不明です。
意外と簡単♪スマホのマイクを使ってHDDの回転数を調べる
結局WDのスペック表記は全く参考にならないので、HDDの本当の回転数を知りたい場合には実測してみるのが一番正確です。意外にもHDDの回転数はスマホのマイクを使う事で誰にでも簡単に確認をする事が可能なので、お家に転がっている複数のHDDを用意して回転数を知らべてみようと思います。
用意した物
・1台目:4200回転のHDD
・2台目:5400回転のHDD
・3台目:7200回転のHDD
・4台目:問題の回転数不明のWD Elements Desktop(8TB)
・スマートフォン(iPhone)
・静かな場所(押入れ・便所・お風呂場等)
使用するアプリ
・音の周波数が確認できるスペクトルアナライザーアプリ
せきねさんは無料で使えるiPhone用のスペクトルアナライザーアプリ「Sonic Tools SVM」を使用しました。
HDDの回転数の調べ方
HDDの回転数の測定方法は簡単で、できるだけ静かなお部屋で動作中のHDDのそばにスペアナアプリを起動したスマホを置き、スマホのマイクで音の周波数(Hz)を調べるだけです。
スマホ上に表示される音の周波数の単位は「Hz(ヘルツ)」ですがヘルツは1秒あたりの周波数なので、HDDの回転数である毎分の値「RPM(回転/分)」を求めるにはヘルツに「60」をかけてあげればOKです。よって・・・
・「90Hz」と表示された場合:1秒あたり90回転しているので1分あたりの回転数を求めると90 x 60 = 5400なので「毎分5400回転」と言う事
・「120Hz」と表示された場合:1秒あたり120回転しているので1分あたりの回転数を求めると120 x 60 = 7200なので「毎分7200回転」と言う事
1台目:4200回転のHDD
↑こちらは、せきねさんが21年前に買ったノートPC向け2.5インチサイズのIBM製HDDです(大学生の頃にスヌーピーのシールを貼ってスケルトンHDDケースに入れて使っていました)。
↑ラベル記載されている通り、こちらは(今となっては珍しい)「4200回転」のHDDです。
このHDDに電源を繋いで動作させ、スマホで音の周波数を測定してみると・・・
↑「72Hz」と表示されました。つまり72 x 60 = 4320となり多少の誤差はありますが「毎分4200回転(4200rpm)」のHDDであると言う事がHDDの動作音から調べる事ができました。
2台目:5400回転のHDD
↑続いてこちらも古いですが東芝製のHDDで、残念ながらラベルに回転数の記載がないので・・・
↑東芝のサイトで型番からスペックを調べると「5400回転」のHDDでした。
このHDDの動作させ、スマホで音の周波数を測定してみると・・・・
↑「89Hz」と表示されました。つまり89 x 60 = 5340となり、ほぼスペック通りの値で「毎分5400回転(5400rpm)」のHDDと言って良いでしょう。
3台目:7200回転のHDD
↑続いての化石HDDコレクションは2007年製の日立のHDDです。
↑HDDのラベルには「7200rpm」と記載されています。
このHDDの動作させ、スマホで音の周波数を測定してみると・・・・
↑「119Hz」と表示されました。つまり119 x 60 = 7140となり、ラベルの記載通り「毎分7200回転(7200rpm)」のHDDだと言えます。
4台目:問題の回転数不明のWD Elements Desktop(8TB)
スマホを使ってHDDの音の周波数を調べる事で「5400回転」や「7200回転」など回転数が判別できる事が分かったところで、最後に問題の回転数が怪しい「WD Elements Desktop (8TB)」の音の周波数を測定します。
その結果は・・・
↑「119Hz」と表示されました。つまり119 x 60 = 7140なので、このHDDの回転数は「毎分7200回転(7200rpm)」です!(やっぱり!)
と言うことで・・・
↑CrystalDiskInfoに表示される回転数「5400RPM」は正確な値ではなく、本当の回転数は「7200回転」なのでだまされないようにしましょう(これはCrystalDiskInfoが悪いのではなく、7200回転なのに5400回転(クラス)と言う意味の分からないスペック設定をしているWDが悪いのです)。
ちなみに今回の音の周波数の測定について瞬間的に「119Hz」が表示されたと言う訳ではなく・・・
↑動画にすると分かりやすいですが継続的に120Hzあたりの動作音を出しており、常に7200回転で動作している事が分かってもらえるかなと思います。
まとめ
オッサン世代であれば数十年以上HDDを使用してきたかと思いますが、どんなに安いHDDを買ってもスペックに記載されている回転数と実際の回転数が異なるなんて事はこれまで一切ありませんでしたし、そんな事を疑った事も聞いた事もなかったかと思います。その為HDDの回転数を調べる必要性や機会は一切ありませんでしたが、今回WDの変テコなスペック表記のおかげで「HDDの回転数をスマホで実測できる」と言う事が分かり、何気に勉強になりましたし作業的にも意外と楽しむ事が出来ました(笑)。せきねさんが購入したWD Elements Desktopは今も人気のある売れ筋商品なので、購入する機会がありましたらスマホで本当の回転数を確認して楽しんでもらえればなと思います(搭載されるHDDは購入時期により変わり、中には耐久性の高いヘリウムが充填されたお高いモデルが搭載されている場合もあり、回転数以外にも色々と話題の製品だったりします)。
2022/03/13(追記):分解手順を公開しました
WD Elements Desktopを分解して中身のHDDを取り出しました。詳しい分解手順を載せた記事を新たに作成しましたので中身のHDDだけを利用したい方は参考にしていただければと思います。